研究課題/領域番号 |
16KT0157
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
林 勇吾 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (60437085)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 信頼 / 集団感情 / 電子ネットワーク / バイアス / 人工知能 |
研究実績の概要 |
前年度までに実施した探索的な検討を通じて,問題解決場面における電子ネットワーク上の他者との意見交換において.メンバーに対して持っているポジティブ/ネガティブな「感情」や「信頼」が葛藤の抑制とバイアス思考を抑制する要因になることが明らかになった.そこで,これらの知見をもとに集団による協同問題解決の実験室実験で利用する対話エージェントを過去の研究成果をもとに開発を行い,実験中にエージェントが仮想的に感情表出を行い,それを実験的に操作して利用できるようにした.また,次年度に予定していた課題中に信頼度の自己/他者評価が行えるインタフェースの構築も行い,課題中に自己/他者の信頼を実験的に操作しながら検討を進めるように実験システムの開発を行った.信頼度の要因を操作した実験の結果では,ネットワーク上でのメンバーが相互にネガティブな信頼を構築する場合には,意見の対立や葛藤が生じた際の思考バイアスを話し合いの中で抑制することは出来ないことが明らかになった.一方で時間とともにポジティブな信頼がグループ内で形成されれば,メンバー内で葛藤が生じていても思考バイアスを緩和し,異なる視点を取得するする活動が発現することが実験室実験を通じて明らかになった.この研究成果は,人工知能学会論文誌(「信頼構築プロセスが協同問題解決の視点取得に及ぼす影響:エージェントを利用した実験的検討」)にて発表した.また,国際会議の研究発表として,ネットワーク上の他者とのジレンマ状況でのインタラクションに関する検討(CogSci2017)やエージェント(ロボット)に対する信頼度に関する調査(HRI2018)も発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までに実施する予定であった対話エージェントの開発に加え,グループメンバーのメタ認知を喚起させるインタフェースの検討も行った.また,信頼度に着目した実験も実施し,集団によって発生する葛藤時において思考バイアスを緩和する要因を検討することが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は集団による信頼度構築に着目した検討は進んだものの,集団のポジティブ/ネガティブな感情の表出に関しては成果が出ていない.そこで,今後はグループメンバーによって表出される集団のポジティブ/ネガティブな感情の表出について検討を行う.その際には,これまでの集団による知識創造の先行研究で明らかになってきた集団内の異論を唱える少数派のメンバーによって作り出させる葛藤に着目し,集団感情の種類によって思考バイアスがどのように変わるのかを検討し,研究成果を出していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は,これまでの研究者が所有していた情報機器を利用して取り組んだため,実験システムの開発と実験実施のために必要な物品の購入を行わなかった.しかし,次年度から実施予定の実験では,台数が足りないため予定していた機材を新規に購入する必要があり,次年度以降にその予算を利用する予定である.また,今年度は実験実施の回数が当初予定していたよりも少なかったため,人件費や論文掲載に必要な印刷費用等が少なかったが,次年度の実験ではこれらの予算を利用する予定である.
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