研究実績の概要 |
今年度は前年度の研究で課題となっていた,問題解決者が知覚する集団に対するポジティブ/ネガティブな感情の表出による認知プロセスへの影響に関する検討を行った.具体的には,林(2014)の仮想集団実験パラダイムを用いて,協同問題解決場面のグループメンバーが課題遂行時にポジティブ/ネガティブな感情の表出をエージェントを用いて操作し,協同問題解決がどのように影響するのかを検討した.実験では,先行研究で明らかにしてきた集団内の異論を唱える少数派のメンバーによって作り出させる葛藤に着目し,集団感情の種類によって思考バイアスがどのように変わるのかを検討した.その結果,集団内の各メンバーがポジティブな感情が表出する発言の頻度が増大するほど,異論を唱える少数派のメンバーに対する視点取得の頻度も多くなることが明らかになった.この分析を加えた研究の成果は,米国の認知科学の雑誌論文である,Cognitive Scienceに研究の成果が掲載された(Hayashi(2018), The power of a "Maverick" in collaborative problem solving: An experimental investigation of individual perspective taking within a group, Cognitive Science, 42,69-104.
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