前年度の課題であった論文化に向けて2本の論文の執筆,投稿に向けての準備を行った.これらは,(1)電子ネットワーク上でのリフレクションに関する研究と(2)葛藤を要するネットワーク上での他者とのインタラクションに関する査読付きの学術雑誌論文である. 前者の(1)では,当初の研究計画にあった,「電子ネットワーク上にリフレクションを促すシステムを用意し,葛藤状態の緩和を促すシステムの開発」に関連する研究内容を扱っている.ここでは,教育場面を取り上げ,学習者がオンライン上のシステムからエージェントのリフレクションを受けながら学習課題を行うというものである.この研究では,最終年度の課題でもあった「個人特性」にも着目した検討を行った.具体的には,対人スキル(自閉症度合い)に応じてエージェントによるリフレクションがどのように影響するのかを調査した.そしてその結果,リフレクションの有無と学習者が取り組む課題への活動状況,個人特性といった複数の要因が影響していることが明らかになった.後者の(2)では,グループメンバーの振舞い方をコンピュータのエージェントを用いて操作した実験を引き続き行った.ここでは,規則発見課題を用いた複数人での実験で,課題に対する葛藤の生起段階において,メンバーの発言内容が協同問題解決の仕方にどのように影響を与えるのかをより詳細に検討した.その結果,葛藤の大きさが課題のパフォーマンスに影響を与えることが明らかになった.今後の課題として,個人内での葛藤の大きさも詳細に検討していく. 上記の2本の論文について,1本は国内の査読付き雑誌に投稿し掲載され,もう1本は引き続き,追加実験を行い,海外のジャーナルに論文を投稿するための準備を行っている.
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