研究課題/領域番号 |
16KT0170
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青山 卓史 京都大学, 化学研究所, 教授 (80202498)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞極性 / リン脂質シグナル / PIP5K / ROP GTPase / 植物細胞形態形成 |
研究実績の概要 |
植物細胞の形態は個々の細胞機能を構造面から支えるだけでなく、組織や器官の形態を決定するための重要な因子となる。細胞壁で囲まれた植物細胞の形態形成過程は不可逆的に進行することから、常に厳密な制御が必要とされる。中でも細胞極性の確立は植物細胞の複雑かつ精緻な形態を生み出すために欠かせない過程であり、その機構を解明することは真核細胞全般の形作りを理解する上でも有用である。本研究課題では、根毛細胞の形態形成過程に起こる平面内極性の確立という現象に焦点を当て、細胞膜上のシグナル因子で構成されるその機構を明らかにする。 根毛は根の表皮細胞の表面の一部が先端成長することにより生み出される構造体である。その発生過程では最初にバルジと呼ばれる突起が形成されるが、そのバルジ形成の位置は表皮細胞表面上の根端付近に厳密に定まっている。そのバルジ形成位置の決定に関して、ホスファチジルイノシトール5ーキナーゼ(PIP5K)、PIP5Kにより産生されるホスファチジルイノシトール4,5二リン酸(PIP2)、および植物のRhoファミリーGタンパク質であるROPによるフィードフォワードループを中心とする平面内極性確立のための分子機構を想定し、そのモデルについて計算機によりシミュレーションを前年度までに行っている。 平成29年度においては、計算機によるシミュレーションの検証のために、本来根毛が形成されない根表皮細胞(非根毛細胞列の細胞)においてPIP5K3とROP2のそれぞれの蛍光タンパク質融合タンパク質を人為的に発現させる実験を行った。その結果、PIP5K3とROP2の共発現は未だ行われていないが、少なくともPIP5K3のみでは平面内極性および細胞形態における変化は起こらないことが確認された。引き続きこの非根毛細胞列での発現系を利用して、平面内極性確立の構成的実験を進行させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計算機によるシミュレーションの検証のために、まずPIP5K3の非根毛細胞列における人為的発現を形質転換シロイヌナズナで行った。これに次いでROP2の同様の発現実験も進んでおり、当初の計画通りである。また、それらの細胞内局在性の解析も行われている。このように、研究は全体としておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画の通り、30年度ではPIP5K3とROP2を同時に非根毛細胞列において発現する形質転換シロイヌナズナを作成し、計算機によるシミュレーションを検証する。検証実験の結果をもとに更に発現様式を変化させた形質転換植物を作成することによりモデルの適正化を進め、最終的にPIP5KとROPによるフィードフォワードループが重要であることの証明を目指す。
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