研究課題/領域番号 |
16KT0173
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西山 功一 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 准教授 (80398221)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | 血管新生 / 集団的細胞運動 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
平成29年度には、前年度において研究協力者らとともに進めてきた内皮細胞における一細胞移動と細胞形状を自動抽出するための機械学習をベースとした方法論の開発をさらに改善した。それにより、蛍光標識した細胞と微分干渉画像データを併用することで、特に細胞形状の時間変化をより明確に解析することが可能となってきた。さらに、得られてきた細胞重心の経時的な位置情報から、平均二乗変位や自己相関関数などを含む様々なパラメータ変化を算出することが可能となったとともに、テンソル分解と主成分解析の手法を合わせることで、細胞形状変化の特徴がより詳細に抽出できることがわかった。この一細胞動態解析法の有用性を確かめるために、細胞運動に必要なF-アクチンの制御分子の一つである低分子GタンパクRac1をノックダウンしたヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いて、野生型HUVECと比較することで、Rac1に特徴的な細胞運動パターンの抽出を現在試みている。 また、平成29度の研究計画に掲げた一つである内皮細胞運動制御における壁細胞の影響の検討に関して、実験系の構築を進めた。微小流体デバイス内のフィグリン・コラーゲン基質表面に、内皮細胞とペリサイトを適切な比で導入し、ヒト肺繊維芽細胞と共培養することで、基質内に三次元的に血管新生様の現象を誘導することが可能となった。免疫組織学的解析の結果、内皮細胞の血管構造を取り巻くペリサイトの存在が確認され、生体内をよく模す新生血管が誘導できていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度の達成目標課題として、血管新生における集団的内皮細胞運動を制御する細胞間相互作用のしくみを、数理モデルを使って明らかにすることを掲げている。前年度において、その解析の基礎となる数理モデルの準備は整ってきたが、数理モデルに組み込む規則やパラメータを抽出するための2細胞動態解析がやや遅れている。その他の達成目標課題に関しては概ね良好に研究が進展しており、全体までの進捗状況の自己評価として、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、研究計画がやや遅れている二細胞の接着培養法の改善とその動態解析を中心に進めていく。これまで、二細胞の接着培養として、細胞を二種類の蛍光色素で標識した後にソーティングし、スフェロイド形成の技術を応用して、意図的に二細胞を接着させる方法を開発してきた。しかし、細胞を接着させる浮遊培養の際に、細胞が巨大なバキュオールを形成し(管腔形成の前段階)、動きを観察することができる二細胞体を形成できる確率が極めて低いことが問題であった。それを、克服する一つとして、Rac1機能を阻害することで、エンドサイトーシスによる細胞外液のとりこみとバキュオールの形成を抑制する方法が考えられる。まず、同方法の可能性を模索しながら、観察可能な2細胞体の効率のよい作製方法を確立する作業を行う。次にその方法を用いて、二細胞動態を取得し、さらに、これまでに構築してきた画像解析技術を用いることで二細胞運動の特徴を捉えていくことを予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
生物学的実験がやや遅れており、また、それに伴いコンピューター上での作業が相対的に多くなったことで、特に物品費において実使用額が使用見込み額より少なくなり、次年度使用額が生じた。次年度には、当初本年度に計画していた生物学的実験を行う予定であり、そのための費用として使用する計画である。
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