研究課題/領域番号 |
16KT0174
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
福田 孝一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (50253414)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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キーワード | パルブアルブミン / 海馬 / GABA / 細胞構築 / gap junction |
研究実績の概要 |
前年度に着手した海馬におけるパルブアルブミン(PV)陽性GABAニューロンの分布パターン解析をさらに展開した。PVニューロンは海馬と新皮質における主要なGABAニューロンであり、情報処理の担い手である錐体細胞の活動を制御するもっとも重要な局所回路ニューロンである。PVニューロンは海馬CA1領域において二つの平行な平面内に分布し、それぞれにおける二次元的分布パターンをNearest neighbor distance法により解析した。その結果、上昇層/海馬白板境界においてはランダムパターンであったが、錐体細胞層のPVニューロンは等間隔規則配列であることが判明した。後者が前年度の解析と異なる結果であった主な理由は、前年度に熊本地震により破損した顕微鏡システムの更新により解析の精度をあげることができたことである。錐体細胞層のPVニューロンは樹状突起を垂直方向に伸ばし、入力を限定的に受け取るのに対して、白質境界部のPVニューロンは樹状突起を大きく水平方向に伸ばし、入力を幅広く受ける形態である。さらにどちらも樹状突起間にギャップ結合を形成し、電気シナプスによる同期的なシグナル伝達を行う。したがって今年度の成果から、垂直型の樹状突起形態とその規則的配列は、到来する入力情報を狭い範囲で受け取り、同様の入力を受ける近隣の錐体細胞への精密なfeedforward制御を秩序よく実行するのに適している。一方樹状突起が横方向へ広がる水平型は、海馬からの出力情報を幅広く受けてfeedback制御に関わると考えられるが、その樹状突起形態とランダム配列およびギャップ結合の存在は、幅広い情報の統合や秩序から離れた計算過程を可能にする構造である。引き続き海馬の歯状回でも解析を行った。PVニューロンは顆粒細胞層/hilus境界部に位置し、出力側で横方向に樹状突起を伸ばすが、上記と同様にランダム配列であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海馬と歯状回におけるパルブアルブミン陽性GABAニューロンの分布パターンについての解析は順調に進行している。また大脳皮質における秩序的構成の代表的部位である体性感覚皮質バレル野について、権威ある国際学術雑誌Cerebral Cortex誌に論文が受理された。
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今後の研究の推進方策 |
究極の連合野である海馬と歯状回での解析に焦点を絞り、垂直型と水平型の2タイプのパルブアルブミン陽性GABAニューロンが、分布パターンにおいて興味深い違いを示した成果について解析を深める。ギャップ結合による相互結合の詳細を合わせて追究し、秩序的構成原理と無秩序構成原理の機能的意義との関連を探究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
基金としての補助金制度の利点を活かし、最終年度に増加が見込まれる予算と勘案したため。
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