研究実績の概要 |
本年度は、器官(鰭)サイズに影響を与える「骨形成」に着目し研究を遂行した。 (1) 鰭のサイズ制御にはヒレ骨片長・骨片数が関与することが知られていたが(Parathoner et al, 2014; Goldsmith et al, 2003; Iovine and Johnson, 2000)、本課題研究成果からは骨片数、すなわち骨と骨の連結部(joint)の形成は鰭サイズに影響を及ぼさず、これは先行研究(Schulte et al, 2011)からも類推された。そこで我々はjointの形態・分子特性を解析し、jointが鰭のサイズ制御をしたり、幹細胞供給源として機能したり(Ando et al, 2017)といった他に、四肢の指節間関節と類似した関節構造・機能があることを示し、jointを鰭節間関節と命名した(自治医科大学・大野伸彦教授との共同研究)。本成果は2020年2月の国際会議(Strategic Conference for Fish Investigators)で国外公表予定であったが、コロナウイルスの影響で中止となったため、次年度以降に公表予定である。 (2) 鰭の骨片数ではなく、鰭の骨全体長を指標として鰭サイズを評価するために、個体成長の様々な段階において骨全体長の計測を行った。個体成長と器官サイズ成長の関係はアロメトリーとして古くから研究されるものの(Huxley and Teissiser, 1937)、ゼブラフィッシュの鰭に関しては骨片数での記載であった(Goldsmith et al, 2003)。我々はこれを骨全体長で再評価し、個体成長期を2期に分ける器官成長変化点を見いだした。成長変化点前後で変化する分子シグナルの同定を現在進行中であり、これを以って課題申請段階において想起したシステムレベルでの器官サイズ制御機構の一端が明らかになると期待している。
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