研究課題
世界的にはグローバル・ヒストリー研究は活況を見せている一方、日本ではグローバル・ヒストリー研究の立ち遅れがみられる。そもそも世界史ではなくグローバル・ヒストリーであることの意義は、その語の原義がglobe、すなわち地球であることを考えみればよい。あえて地球規模からのマクロな分析を志向するのが本来のグローバル・ヒストリーであるのに対して、日本でのグローバル・ヒストリー研究はミクロなレベルの研究の集積程度に考えられているのである。こうした国内外の状況を背景に、本研究は16世紀から19世紀という期間において、地域的に全世界を対象とし、グローバル商品15品目の生産、流通、消費文化を検討する。さらに、グローバル商品の消費方法などをもとに文化圏を析出し、世界が多様な文化圏から構成されており、グローバル化の進展にもかかわらず、消費の立場からは多極化する傾向を持っていたことを明らかにする。いずれにせよ、消費の地域的、文化的差異に注目し、モノの生産のグローバル化と、消費文化の反グローバル的な多様性を析出することで、世界の一体化の初期局面を分析し、グローバル化の意味を歴史的に問うことを目的とした研究である。4年間にわたる研究計画のうち、2017年度は第2年度目にあたる。研究事項1「グローバル商品の生産、流通、消費自体の分析」のうち、とくに、米、コーヒー、茶等の分析を実施した。これらの各商品については、前年度同様、広範に先行研究を追うとともに、サバティカルでオランダに半年間滞在することができたため、オランダ東インド会社文書等、オランダ国立公文書館に所蔵する史料を分析の対象とした。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りのテータ収集を行い、論文の公表や口頭報告などを行うことができた。また、研究成果の一般化として、放送大学における新規科目「グローバル経済史」の教材作成・出版ならびにテレビ放送の撮影なども行った。
計画通りに研究を進めることにする。今後はとくに総括的分析ならびに研究成果の公表などにも重点を置きたい。
研究成果の報告(3件)を国際学会で行い、有意義なコメントを得るため、次年度に米国に出張するとともに、東京で国際会議を開催し、本研究の全体的位置づけを明確としたい。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
A.J.H. Latham and Heita Kawakatsu (eds.), Asia and the History of the International Economy: Essays in Memory of Peter Mathias, London and New York: Routledge
巻: - ページ: 57-71
荒野泰典編『近世日本の国際関係と言説』溪水社
巻: - ページ: 187-205
川分圭子・玉木俊明編『商業と異文化の接触―中世後期から近代におけるヨーロッパ国際商業の生成と展開―』吉田書店
巻: - ページ: 777-798
羽田正編『グローバル・ヒストリーの可能性』山川出版社
巻: - ページ: 287-303