本研究の目的は、2016年度から2020年度までの5年間(新型コロナウイルスの影響で、研究期間が1年延び、2021年度までの6年間に延長となる)で、発展途上国を対象にグローバル・バリュー・チェーン(GVC)革命の功罪を実証的に明らかにし、新たなグローバル・イシュー解決のためのガバナンス体制を模索することであった。 その結果、アジアに比べてアフリカ、とりわけ、一次産品の小規模農家は、GVC革命の罪のインパクトが大きく、自由貿易や投資政策による利益が小規模農家に十分に届いていないことが明らかとなった。かつ、自由貿易に代わるフェアトレード認証や有機認証といった、国際NGOが通商ガバナンスに関与しているサステイナブル認証制度の役割が発展途上国の貧困削減に大きく関係していることがわかった。 本研究最終年度(2021年度)は、サステイナブル認証制度といえどもジェンダー視点を欠いている場合は、貧困削減を含むSDGs目標達成に十分貢献しない可能性があることを、社会的インパクト調査を通して明らかになった。サステイナブル認証制度の中で最も世界的に知られているのがフェアトレード認証であるが、女性小規模農家が組合員の伴侶としてではなく、女性自身が組合員として参加した方がより質の高いコーヒーの生産、及び、男性と同等なトレーニングやその他の活動等への確実なアクセスを通じてジェンダー平等が達成できることが明らかとなった。つまり、同じフェアトレードといえども、ジェンダー視点を取り入れたフェアトレード運動の方が社会的インパクトがより大きいことが明らかとなった。
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