研究課題
平成29年においては、国際資金フローのメカニズムにより国際資金循環に対する厳密な定義を検討し、国際資金循環という概念の内包によりその統計の外延、即ちGFF統計の範囲と理論的な枠組みを定めたうえで、国際資金循環F統計の作成に関する理論的諸問題を明らかにした。また、国際資金循環統計作成のデータソースを整備するために、共通な統計基準で国際比較ができるようにするという視点から、国際学会で報告したとき得られたコメントを参考にして、IMFに公表されるIIP統計、CDIS、CPIS(2016),及び国際銀行業統計(The Bank for International Settlements, BIS)の相違と整合性を検討して整理し、国際資金循環統計作成の基本的なデータベースを改善した。なお、バランスシート・アプローチに基づき、世界三大経済大国と金融市場に比較的大きなシエアを持つ主要12カ国を観察の対象として、従来の「部門×取引」という資金循環統計のマトリックスを「国家×国家」形式に組み替え、12か国から構成される国際資金循環のマトリックス (Global Flow of Find Matrix, GFFM)を試作した。即ち、GFFにおける融資の双方の主体、どんな種類の金融商品を、どこまで運用(調達)したのかという三次元の問題(From Whom to Whom by What)を体系的に解釈できる。そのうえ、試作されたGFFMの応用分析として、まず、世界三大経済大国である米国、中国及び日本を主要な観察対象として、各国の対外資金循環の変動がどの程度国際的に波及していくのか、どのような形で他国に影響を及ぼすかについて、実証分析を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究は申請者の長年の研究課題であり、この分野における国際的な動きと先端研究の実態を知っているので、研究の方向性についてはよく把握している。当初予定の研究計画どおりに順調に進んでいるが、IMFとBISなどの国際金融機関による国際統計基準の改定などで、実際のGFFMに関するデータソースの整備は予想より複雑であった。そのため、其々の国際金融機関に公表されている統計資料を詳しく調べて、以上で述べた統計的枠組み、データの基本概念及びデータソースの整理を通じて、国際資金循環統計作成のためのデータソース表をまとめ、一つのGFFMを構築することが可能となっている。それを使ってこれまで説明できなかった問題にGFFMの情報で回答できるようになっている。
GFF統計の精度を高めるために、CDIS,CPIS,IIP及びBIS統計の整合性について更に厳密に修正し、同じ統計的枠組みの中で同じ統計基準のデータベースを整備する。また、ストックベースのGFFMからフローベースのGFFMへの発展は難題であるが、BOPとIIPの作成方法を参考にして、比較的精度が高いフローベースのGFFMを試作する。データベースが作成出来たら、応用分析手法の開発も必須なものである。統計記述分析手法以外に、パネルデータ分析手法を取り入れて中日米の対外資金循環の安定性と構造的変化を比較したうえで、3か国のGFFにおける構造的同質性と異質性を明らかにする。
共同研究のため、米国にあるIMF統計部に行く予定であったが、昨年11月辺り腰の病気があり、予定とおりの出張に行けなかったため、IMF統計部の共同研究者との了解を取って今年11月に改めていくことになっている。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
Recent Studies in Economic Sciences, Information Systems, Project Managements, Economics, OR and Mathematics, Kyushu University Press
巻: Monograph 2017 ページ: 29-44
経済科学研究
巻: 第21巻 ページ: 7-24
The Journal of Quantitative & Technical Economics
巻: Vol. 34, No.10, ページ: 94-110