研究実績の概要 |
精神疾患の生涯有病率は高く、統合失調症では約1%、うつ病等の気分障害では10%以上に至り、社会的関心は極めて高い。精神疾患では、アルツハイマー病/パーキンソン病でのような目立った脳器質的所見(神経細胞脱落)は観察されない。また、ゲノム解析単独では精神病態の解明には至らず、分子-細胞-システム-回路など、複雑な素因の絡まりが最終的な精神病態を規定することが予想され(精神病態=複雑要因間の恒常性破綻)、病態メカニズムの生物学的解明はほとんど進んでいない。ペリサイトは、血管内皮細胞を取り巻くように存在し、血液脳関門(BBB)形成に重要である。申請者らの事前研究成果により、ペリサイトの数的制御が破綻(ペリサイトロス)することが、脳微小血管恒常性の破綻につながり、精神機能の恒常性破綻を招く可能性がある。したがって、ペリサイトロスが精神疾患の前兆や、病態の進行を示す客観的指標となり得る可能性がある。本研究では、精神疾患病態としてペリサイトロスを取り上げ、ペリサイトを可視化させる技術を開発すること(可視化=ペリサイトイメージング)で、疾患の早期診断への将来的応用を指向する。本目的を達成するために、本年度は、脳血管ペリサイトのマーカーであるPDGFRβに高親和性な化合物である1-{2-[5-(2-methoxyethoxy)-1H-benzo[d]imidazol-1-yl]quinolin-8-yl}piperidin-4-amine (CP-673451, IQP)を母体化合物として、IQPへの125I標識の最適化と、76Br標識の最適化、および標識後の親和性/選択性の解析を行った。その結果、 PDGFRβへ高親和性を示すPET/SPECTイメージングプローブを開発することができた(Sci. Rep. 8, 10369., 2018)。今後は脳への集積に関する最適化を実施するともに、その集積の程度をBmal1欠損マウス脳組織にて検討する予定である。
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