研究課題
本研究では、ウイルスベクターを利用して、進行性の神経変性が数ヶ月以上持続するマカクサルパーキンソン病モデル(アルファシヌクレイン過剰発現モデル)を開発し、このモデルに対し、症状発現前の期間も含めて行動学的解析・組織学的解析・生化学的解析・脳機能画像解析および電気生理学的解析など各種の解析手法を適用することを目的としている。このことにより、パーキンソン病の進行過程における脳・体内状態を明らかにし、症状発現前の病態の進行のメカニズムを理解することによって、パーキンソン病における病態進行の予測や根治療法の開発に貢献する。今年度は、中脳への注入によるドーパミンニューロン選択的なアルファシヌクレイン発現を実現する為のチロシン水酸化酵素(TH)プロモーター搭載アデノ随伴(AAV)ウイルスベクターの開発を行ない、マカクサルへの注入実験を開始したほか、A30PやA53Pおよびそのdouble mutantなどの変異型アルファシヌクレインを発現するベクターを作成した。また、個体差の大きい霊長類の脳において黒質緻密部への正確な注入を達成するために、MRIベースのナビゲーションシステムを改良し、MRIと注入実験において変更する必要がないヘッドホルダーを利用することで注入精度が向上することを確認した。さらに、運動障害の発現時期や障害の程度を解析する為の採餌課題の検討を行なったほか、マカクサル髄液採取法の検討を行ない、コンスタントに髄液を採取出来ることを確認した。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書の研究の目的および実施計画欄に記載した、アルファシヌクレイン発現AAVベクターの改良とベクター注入によるパーキンソン病モデルザル作成パラメーターの検証、において当初見込んだ通りの成果を得ている。また翌年度に本格的に開始するパーキンソン病モデルザルの行動学的・生化学的・組織学的解析、アルファシヌクレイン過剰発現パーキンソン病モデルザルの脳機能画像解析・生化学的解析に関しても当初予定通り準備が進んでおり、研究が順調に進展していると考えられるため。
研究は当初の予定通り順調に進展していると考えられるため、今後も当初の予定に従い、前年度着手したドパ-ミン細胞選択的発現ウイルスベクターの開発等を進め、その結果決定するベクターと注入パラメーターを用いて、アルファシヌクレイン過剰発現パーキンソン病モデルザルを作成する。採餌タスクや、独自に開発した片側性モデル用のサル用UPDRSを利用して行動学的解析をおこなうほか、生化学的解析も実施できるよう準備を進める。注入から1~2ヵ月毎を目処に灌流固定を行なった脳サンプルを作成し、THおよびアルファシヌクレインの染色により導入遺伝子の発現状態やドーパミン細胞死の程度を解析すると共に、免疫組織学的手法あるいはIn situ hybridization法によってパーキンソン病関連遺伝子の発現状態を検証する。このほか、アルファシヌクレイン過剰発現パーキンソン病モデルザルの電気生理学的、およびアルファシヌクレイン過剰発現パーキンソン病モデルザルの脳機能画像解析を開始出来るようにするなど、当初計画通り研究を推進する。
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