本研究では、ウイルスベクターを利用して、進行性の神経変性が数ヶ月以上持続するマカクサルパーキンソン病モデル(アルファシヌクレイン過剰発現モデル)を開発し、このモデルに対し、症状発現前の期間も含めて行動学的解析・組織学的解析・生化学的解析・脳機能画像解析および電気生理学的解析など各種の解析手法を適用することを目的としている。このことにより、パーキンソン病の進行過程における脳・体内状態を明らかにし、症状発現前の病態の進行のメカニズムを理解することによって、パーキンソン病における病態進行の予測や根治療法の開発に貢献する。今年度は、昨年度に引き続きドーパミンニューロン選択的なアルファシヌクレイン発現を実現する為のチロシン水酸化酵素(TH)プロモーター搭載アデノ随伴(AAV)ウイルスベクターのマカクサル中脳への注入実験を実施し、その評価を行った。その結果、ドーパミンニューロンへの選択性が比較的高く、効率的な導入遺伝子発現を実現するベクターを確立できた。また、確率したプロモーターを用いて、変異型アルファシヌクレインを発現するベクターを作成し、マカクサル中脳への注入を行ったところ、注入後数ヶ月でドーパミンニューロンが変性することを示唆する結果を得た。さらに、パーキンソン病モデルザルの多点記録による電気生理学的解析を行い、パーキンソン病モデルザルでは脳の多数の領域においてオシレーションが生じており、領野間の同期強度に変化が生じていることを明らかにした。
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