研究課題
本研究は、致死性不整脈発生のきっかけとなる期外刺激(トリガー)の発生機序を計算論的に理解し、その発生予測を可能とする方法論の構築を目的とする。数理モデルの構築とそのコンピュータシミュレーション解析により、不整脈のトリガーになると考えられている早期後脱分極(early afterdepolarization:EAD)応答や、Phase-2リエントリーの発生機序を明らかとした。トリガーの発生から致死性不整脈(心室頻拍・心室細動)に至る発生メカニズムを解析するため、2次元的な広がりをもった心筋シートモデルを構築した。心筋細胞長軸方向とその横断方向での興奮伝播速度比が3:1となる生理学的興奮伝播速度の達成には、心筋横断方向よりも心筋細胞長軸方向での電気的結合が重要であった。生理学的な心筋シートモデルが構築できたことで、トリガーの発生と致死性不整脈発生との関係を検討することを可能にした。一方、心筋活動電位における再分極電流を構成すると考えられているhERGチャネルの電気生理学的および薬理学的実験データから、このチャネル電流を数理モデル化した。hERGチャネル電流モデルを活動電位モデルへ組み込み、薬物誘発性EADの発生予測シミュレーションを実施した。第III群抗不整脈薬の一つであるNifekalantは、膜電位の条件によって、hERGチャネル遮断作用のみならず、電流促進作用を示す。この促進作用が、EADの発生を抑制することができることを示した。以上で得られた成果は、期外刺激の発生機序に基づく新たな不整脈発生予測法の開発に資する重要な結果であり、致死性不整脈の抑止・制御論の確立に向けた礎を築くことができた。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件)
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