研究概要 |
本研究課題に関する今年度の主な結果は以下のとおりである。 (1)安定ジアルキルシリレンを出発物質として、すべてアルキル基であるジシレニドの合成に成功し、これを用いて、芳香族置換基(ナフチル、アンスリル、およびフェナンスリル基)を一つ持ち、他の置換基はすべてアルキル基であるジシレンの合成にはじめて成功した。この系はジシラニルπ系と芳香族炭化水素π系の間の相互作用を明確に評価することのできる初めての系であり、実際、アンスリル置換ジシレンにおいて、可視領域に顕著な電荷移動吸収帯の発現することを見出した。 (2)安定シリレンを合成する際に用いたブタン-1,4-ジリチウム試薬を用いて、新しい安定環状ジシレンを合成することに成功した。このものはPd(0)との反応によって、これまでのうちで、最もπ錯体性の強い14電子ジシレン-パラジウム錯体を与えることがわかった。 (3)ケイ素の特性を生かして、ケイ素、炭素、および水素のみからなり、官能基を含まないロタキサンをはじめて合成し、その分子構造をX線構造解析によって明らかにし、動的挙動を温度可変NMRを用いて解析した。 (4)ケイ素基盤分子ジャイロスコープとして、新たに、2,5-ビスチオフェンジオキシドおよびフラン環を回転子とするものを合成し、固体中での回転挙動をX線構造解析、NMR分光法等によって解析した。 (5)長鎖オリゴシランであるペルメチルデカシランの末端メチル基を親水性のテトラエチレングリゴキシドに置き換えた化合物を合成し、デカシデンの水中での吸収および発光スペクトルの挙動を研究し、オリゴシラン集合体の構造を考察した。
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