研究分担者 |
尾関 智二 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60214136)
成毛 治朗 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教授 (40237623)
石川 英里 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (90323831)
伊藤 建 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (50376935)
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研究概要 |
2004年に代表者は、Dzyaloshinsky-Moriya相互作用を実験的に示すモデルとして理論的にも注目される[(VO)_3(SbW_9O_<33>)_2]^<12->(VO^<2+>が3個V…V距離5.4Åでほぼ正三角形に配位)がスピンフラストレーション系特有のS=1/2【tautomer】S=3/2の磁化の跳びと量子ヒステリシス(低温での高磁場パルスの下)を示すことを見出した。この発見を契機に量子/古典の境界領域のナノスピンクラスターの分子磁性を総合的に理解するため新規ポリ酸分子磁性体を創製しその構造化学を明らかにし、スピン間相互作用の実験的詳細を磁化率、EPR,パルス磁場下での磁化、μSR、中性子散乱、比熱などの測定により求め、新規単分子磁性体群の分子設計の実験的基礎を得ることを目的とした。2005年度ではほぼ正六角形のスピンクラスターを含むポリ酸の創製に成功しこれが強磁性を示すことを発見した。これら新規ポリ酸は(n-BuNH_3)_<12>[(CuCl)_6(AsW_9O_<33>)_2]・6H_2O(1),(n-BuNH_3)_<12>[(MnCl)_6(SbW_9O_<33>)_2]・6H_2O(2),(n-BuNH_3)_<12>[(CuCl)_6(AsW_9O_<33>)_2]・6H_2O(3),(n-BuNH_3)_<12>[(MnCl)_6(AsW_9O_<33>)_2]・6H_2O(4)の化学式で表されるD_<3d>対称のアニオンとn-BuNH_3^+カチオンとの塩であって、中心は6個のCu^<2+>およびMn^<2+>常磁性イオンからなる2.9-3.2Åの辺の正六角形geometryを示し1-3は強磁性的相互作用を、4は反強磁性的相互作用を示した。最近接の常磁性イオン間の交換作用のみを考慮した場合これらの値は磁化率、強磁場ESRスペクトルの温度依存性の結果からそれぞれJ=15.5K(g=2.06),0.2K(g=2.00),5.6K(g=2.49),-0.1K(g=1.88)と求められた。基底状態、励起状態のエネルギー準位も見積もられ、今回発見された六角スピンポリ酸は現在、分子磁石として実験的、理論的に盛んに研究されているMn_<12>に比べ構造的にも単純であることから理論的解明も容易と推定された。今後AC磁化率、パルス磁場下での磁化、μSR、中性子散乱、比熱などを求め新規分子磁石として理論的解明を行う。さらには新規スピンボール、ナノチューブポリ酸の創製にも成功しこれら量子/古典の境界領域のナノスピンクラスターの分子磁性と構造化学を求めつつある。
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