研究概要 |
スピンクラスターの分子磁性を総合的に理解するため単純なスピン構造を持つポリ酸分子磁性体を創製、構造化学と自己集合反応メカニズムを明らかにする。得られる結果を基礎にスピン間相互作用の実験的詳細を磁化率、EPR,パルス磁場下での磁化の測定を行い、磁気化学を明らかにし量子トンネルの分子論的解釈を行い、新規単分子磁性体群の分子設計の実験的基礎を得る。本年度の成果としては、 (1) これまで見出してきた種々の構造(例えば3-4nm径のタイヤ状ナノリング)のポリ酸に磁性イオン、例えばVO^<2+>,Cu^<2+>,Ni^<2+>,Co^<2+>,Mn^<2+>や希土類金属イオン(Ln^<3+>)を導入し種々のスピン構造(三角、六角、プリズム、ボール、リング、鎖状)のナノ(4nm)構造のポリ酸を得る中で希土類イオンが導入された一連の楕円構造の希土類ナノリングポリ酸{Mo_<150>Ln_2},{Mo_<120>Ln_6},{Mo_<130>Ln_<10>}のチェーン構造{Mo_<146>Ln}∞を発見しその合成法を確立した。また光化学的に生成されるこれらナノリングポリ酸および反応中間体のESI-MSの測定に成功した。 (2) ε-Keggin構造を含む[H_2MO^V_<12>O_<28>(OH)_<12>(Mo^<VI>O_3)_4]^<6->の構造が明らかにされこの構造の光自己集合化のメカニズムがこれまで得られてきたナノリングポリ酸の場合を基礎に考察され、{Mo^V_6Mo^<VI>_3}中間体の分解を経た機構が提案された。 (3) 昨年度見出した六角スピンを含む新規ポリ酸分子磁石のパルス磁揚による磁化過程が、たとえばCu_6AsやCu_6Sbの場合S=3→S=-2への量子トンネルを経た磁化によるものであることが明らかとなった。 (4) α-α結合からなる菱形スピン[Cu_4(GeW_9O_<34>)_2]^<12->が見出され従来から知られていたβ-β結合からなる菱形スピン[Cu_4(H_2O)_2(GeW_9O_<34>)_2]^<12->と磁気化学が比較された。同時にα-α結合のポリ酸がCu_4間のスピン相互作用が定量的に理解するモデルとして優れていることを見出した。 今後、得られた新規ポリ酸の電気的性質を求める予定である。
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