研究課題
特別推進研究
2004年、我々はVO^<2+>が3個V…V距離5.4Aでほぼ正三角形に配位したV_3クラスターを含む[(VO)_3(SbW_9O_33)_2]^<12->ポリ酸がスピンフラストレーション系特有の磁化の跳びと量子ヒステリシスを示しDzyaloshinsky-Moriya相互作用の優れた研究対象モデルであることを報告した。この発見を基礎に量子/古典の境界領域のナノスピンクラスターの分子磁性を総合的に理解するためnon-colinearなスピン構造(三角、四角、六角、プリズム、ボール、リング、鎖状)の新規ポリ酸分子磁性体を創製し、自己集合反応の生成メカニズムと構造化学および磁気化学を明らかにし、新規単分子磁性体群の分子設計を行った。光自己集合反応を用いてリング、楕円、卵、ボール、チェーン、チューブ構造の新規ナノポリ酸を創製しその構造化学、生成メカニズムを明らかにした。またリング内に有機分子、磁性イオン(Cu^<2+>,Mn^<2+>,Ni^<2+>など)、希土類イオン(Ln^<3+>)を配位させることにも成功した。三角スピンに続いて六角スピン、スピンプリズム、菱形スピンクラスターを含む新規ポリ酸を創製し、量子トンネル、量子ヒステリシスに関する磁気化学の実験的詳細(スピン間の相互作用としてのJおよびDの見積もりと起源など)を求めることに成功し分子磁性を明らかにした。創製されたナノリング、ナノボールポリ酸の新しい物性として近赤外光伝導を見出し、分子表面のMoO_6八面体での水分子の配位が光伝導の発現に重要であることを指摘した。得られた成果は新規な分子磁性体の開発と分子設計を確立しただけでなく実験的証拠に裏打ちされた分子磁性理論の理解の良いモデルとなった。(3)の発見はごく最近であったため伝導電子と磁性イオンとの相互作用の分子論的詳細を得るには至らなかったが今後の展開が大いに期待された。ポリ酸がナノテクノロジーの分野での新素材として十分に意義あり重要であることが判明した。
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