研究課題
先ず原子炉圧力容器(RPV)の照射脆化の原因となるナノ析出物(クラスター)を高精度・高分解能で検出するため、局所電極アトムプローブ(LEAP)装置にH19年度に導入したリフレクトロンを用いて、アトムプローブの蒸発イオンの質量分解能を向上させるための最適測定条件を見いだした。1970年代以前に製作された第一世代RPV(Cuなどの有害不純物濃度が高い)および1980年代以降の第二世代RPV(有害不純物濃度が低く抑えられている)に注目して、現在稼働中のベルギー原子炉(Doel-1, -2, -4)のRPV監視試験片などについて、最先端のLEAPや陽電子消滅を駆使したナノ組織観察、照射硬化などの測定および両者の関係の比較検討を行った。主な結果は以下の通りである。1) 第一世代RPV監視試験片(Doel-1, -2)の照射硬化の原因はCu富裕析出物(CRNP)であったのに対し、第二世代試験片(Doel-4)では、そのようなCRNPはほとんど観察されず、Si-Mn-Niナノクラスターが観察された。しかしこのナノクラスターだけでは、照射硬化を十分説明できず、超微小転位ループなどの形成が示唆された。なお未だ電子顕微鏡や陽電子消滅でもこのような欠陥は観察されていない。2) この未知の欠陥の検出・同定は第二世代RPVの照射脆化機構解明に不可欠であるので、照射後焼鈍実験を行ったが、直接このような他の照射欠陥の知見を得ることは出来なかった。この点を解決するために、より高い線量の照射試料の実験を行いつつある。3) 最近電事連で作成された照射脆化予測式(JEAC-4201-2007)を上記の監視試験片試料に適用してみたところ、Ni濃度の低いDoel-1, 2号炉試験片では、予測式よりかなり大きく脆化していること、しかしながらDoel-4試験片ではほぼ予測式通りに脆化していることが分かった。
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