研究分担者 |
和泉 亮 九州工業大学, 工学研究院, 教授 (30223043)
鶴巻 浩 九州工業大学, 工学研究院, 助教 (20315162)
山内 貴志 九州工業大学, 工学研究院, 助教 (70419620)
成田 克 九州工業大学, 工学研究院, 助教 (30396543)
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研究概要 |
目的は水素と表面の反応過程を明らかにすることであり,最終年度の成果は以下のとおりである。 1. Upスピン偏極水素原子線を発生し,それを急峻な反転磁界中を通過させることで無偏極水素原子線に転換した.これにより原子の半分はdownスピン原子に変換でき,スピンの制御に成功した.電磁石により超高真空下にて130Kの低温Si(111)表面を磁化し、スピン制御された水素原子線の表面吸着確率をレーザ倍波発生(SHG)法にて測定した.1.5Tの磁場印加表面では水素の吸着確率にスピンの効果は認められなかった.水素のSiダングリングボンドへの吸着はパウリの排他律を満たしていないことになるが,Si表面の磁化の大きさの絶対測定も必用となった. 2. 低温Ru(001)表面にD_2O分子を吸着させ,その上での吸着D原子のH原子による引き抜き実験を行った.D_2O氷膜厚が3MLになると,引き抜き反応によるHD分子の脱離は起こらなくなった.さらに、8Kの極低温において吸着D原子のH引き抜きを試みたがHDの脱離は認められなかった.このとから,水氷表面での吸着D原子の寿命は大変短いと判断された.これより,星間水素分子の氷表面での形成に積極的な支持は得られなかった. 3. H(g)+D(ad)/Si→HD反応での脱離HD分子の速度分布を疑似ランダムチョッパーを用いたクロスコリレーション法により測定した.並進エネルギの分布は1.1eVのものと0.33eVのものに分解され,その強度比はキネテクス実験での結果と矛盾がなかった.Si表面での引き抜き反応の総説を書いた. 4. Si(100)表面からの水素熱脱の活性バリアを求めた1.6eVを得た.この値はこれまで信じられてきた2.5eVよりもかなり低い値であり,水素熱脱離機構の再検討が必用であることを確認した.拡散移動に援助された新脱離モデルを提案した.
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