研究概要 |
当初の研究に沿って順調に進展している。具体的な成果を以下に述べる。 1.大規模スパース連立一次方程式に対する精度保証法の開発 連立一次方程式の近似解に対する誤差限界の上限・下限を用いたシャープな精度保証法を提案した。これまでも連立一次方程式に対する比較的過大評価の少ない精度保証アルゴリズムを提案してきたが、特に今年度は近似解に対する誤差限界の上限・下限を同時に考えることにより、任意に過大評価を少なくする方式を開発した。また、未解決問題であったRumpの方法による任意悪条件行列の逆行列計算法の収束性についての証明に成功した。 2.誤差無し内積計算法の発展と応用 高精度内積計算アルゴリズムの効率的な並列化に関する研究を行った。内積計算レベルの並列化は、アーノルディアルゴリズムを用いた固有値計算やヤコビアルゴリズムを用いた特異値計算等に有効である。本研究により、並列化版アルゴリズムは逐次版アルゴリズムと同程度の誤差限界を持ち、共有メモリ計算機上で数倍程度の性能向上が可能であることを示した。 3.偏微分方程式に対する解の数値的検証法の検討 水平な帯状領域での熱対流問題について解析を進め、ロール型等のパターンを持つ解の分岐曲線の数値解析を続けている。境界が自由表面である問題を記述するBenard-Marangoni対流の最初の分岐解析が出来つつある。3次元熱対流問題に対する精度保証付き数値計算に関しては,自明解からの不安定化を起こす臨界Rayleigh数直後の矩形解の存在検証に成功した。 4.カオス系を含む常微分方程式の計算機援用証明法の検討 常微分方程式の初期値問題の精度保証付き数値計算法として、アファインアリスメティクにより変数間の依存関係を自動的に組み込むことによる過大評価低減法を開発し、従来よりはるかに長時間に渡る精度保証を可能とした。
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