研究概要 |
1. ラット脳幹聴覚中継シナプスcalyx of Heldのシナプス前末端において、伝達物質放出を制御する電位依存性K電流を記録して、その生後発達変化を解析した結果、生後7日から聴覚獲得後の14日にかけてK電流のKv1、Kv3成分の密度が2-3倍上昇し、チャネル活性化時間が短縮し、14日以降は一定値を取ることが明らかになった。更に特異的プロッカーの作用から、Kv1はシナプス前末端における発火の安定に寄与し、Kv3は高頻度伝達に寄与する役割が明らかになった。シナプス前末端Kチャネルの生後発達変化によって、この聴覚中継シナプスが高信頼性高頻度伝達を獲得すると結論された(Nakamura & Takahashi, 2007)。 2. リアノジン受容体の特異的活性化剤として知られる4-CmCがcalyx of Heldシナプス前末端のK電流を抑制 することによって、神経刺激で誘発される伝達物質放出を最大4倍増強することを見出した。また、この作用はリアノジン受容体活性化作用とは別個の作用であることが明らかになった(Suzuki et al, 2007)。 3. 聴覚開始以前のcalyx of Heldのシナプス前末端においては、電位依存性Ca電流がCa/calmodulin依存的に不活性化することによってシナプス短期抑制がもたらされるが、聴覚開始後に、このメカニズムは著しく減弱することを見出した。その原因は、生後発達に伴う、シナプス前末端内の残存Caの集積の減少にあることが明らかになった(Nakamura et al, 2008)。 4. 活動依存性シナプス短期抑制に対するAMPAレセプター脱感作の寄与は、生後発達と共に減少するが、その原因は、伝達物質放出確率の減少、およびAMPA受容体サブユニットGluR1の発現低下にあることを明らかにした(Koike-Tani et al, 2008)。
|