今までの我々の研究から、染色体接着因子Rec8は減数第一分裂特異的な還元分裂の確立に必須であり、Rec8を欠損させると減数第一分裂の分配様式が還元型から均等型へシフトしてしまうことが分かっていた。セントロメアの中央領域は微小管との結合を介して、おそらく均等型あるいは還元型という方向性の決定に重要な働きを担っている可能性が示唆されており、中央領域に局在するRec8が還元型(一方向性)の姉妹動原体の確立に重要な役割を果たしていると考えられた。しかし、このRec8に依存した還元型染色体分配の確立機構はまだ明らかではない。還元分裂に必要なさらなる因子を遺伝学的スクリーニングにより探索した結果、新規因子Moa1(monopolar attachment)が単離された。moa1破壊株では減数第一分裂で還元分裂ではなく均等分裂を行う細胞の割合が増加した。さらに組み換え反応に欠損を生じる変異を導入したmoa1 rec12二重変異株では、全ての細胞で均等型の分配が観察された。(ちなみに、rec12破壊株単独ではほとんどの細胞で還元型染色体分配が観察されることが示されている。)また、Moa1は減数第一分裂に特異的に発現してセントロメアの中央領域にのみ局在すること、およびRec8と相互作用することがわかった。さらに、セントロメア中央領域のRec8を特異的に不活性化すると、moa1変異株と同一の表現型を示した。以上より、Moa1が減数分裂において姉妹動原体の一方向性の制御において、Rec8の機能を補助し、セントロメア中央領域の接着を確立することにより、動原体が同一方向へ向くようにしていると考えられた。これにより、先の「動原体の接着モデル」の信憑性が裏付けられた。
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