研究課題/領域番号 |
17002016
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研究機関 | (財)大阪バイオサイエンス研究所 |
研究代表者 |
中西 重忠 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (20089105)
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研究分担者 |
疋田 貴俊 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (70421378)
岡澤 慎 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (40414130)
土居 智和 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (20435564)
矢和多 智 財団法人大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (90455246)
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キーワード | 小脳 / 大脳基底核 / 運動記憶 / 報酬・忌避記憶 / 薬物依存 / 神経回路 / 発達 / 神経伝達 |
研究概要 |
本研究は入力と出力が定量的に解析出来る運動系の小脳と大脳基底核の神経回路に焦点を当て、以下の研究成果を得た。 1. 小脳発達期の神経回路構築機構:我々は、顆粒細胞が成熟に伴い静止膜電位が脱分極から非脱分極に移行する事、この非脱分極化によってグルタミン酸受容体、Na^+チャネル、Ca^<2+>チャネル、CaMK IIの一連の神経活動依存的な活性化反応が誘発され、その結果マスター転写因子ETSが成熟化遺伝子の誘導と非成熟遺伝子の抑制を統括的に制御しているという神経活動依存的なシナプス成熟化に関して全く新しい機構を明らかにした。 2. 小脳神経回路の制御機構:小脳神経回路の顆粒細胞に神経伝達物質の分泌を阻止する破傷風毒素を特異的かつ可逆的に発現するトランスジェニックマウスを作製し、顆粒細胞からプルキンエ細胞への神経伝達を可逆的に遮断出来る方法を確立した(可逆的神経伝達阻止法)。このモデルマウスを用いて運動記憶の典型である条件付け瞬目反射と視運動性反射記憶のメカニズムを、時系列を持って解析する事に成功し、この結果、プルキンエ細胞が記憶の発現に、一方小脳深部核或は前庭核が獲得と維持に必須の役割を果たしていることを明らかにした。以上の結果は記憶の一連のプロセスが多様な神経回路で階層的に制御されているという新しい事実を明らかにしたものである。 3. 大脳基底核の神経回路の制御と可塑性の機構:我々は破傷風毒素遺伝子導入ウイルスを組み合わせる事によって基底核の直接路と間接路の神経伝達をそれぞれ特異的、可逆的に阻止出来るモデル動物を作製する事に成功し、この結果直接路と間接路が報酬記憶と忌避記憶に独自の機能を有するという新事実を明らかにした。
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