研究概要 |
動物の発生過程で数多くの細胞がアポトーシスにより死滅し,マクロファージによって貪食・処理される。本研究代表者らはアポトーシス時におこるDNA分解は、カスパーゼによって活性化されるDNaseとマクロファージ、リソソームのDNaseIIによって担われていること、DNAを分解できないDNaseII^<-/->マクロファージではインターフェロン(IFN)β遺伝子が活性化されることを示した。一方、アポトーシス細胞貪食のassay系を樹立し、死細胞の表面に暴露されるphosphatidylserine(PS)を認識して、死細胞をマクロファージに媒介する因子(MFG-E8)を同定した。MFG-E8^<-/->マウスは脾臓で死細胞の貪食が効率よくいかず、Systemic lupus erythematosus様の自己免疫疾患の症状を示すことも見出した。本研究はこの様な背景をもとに(1)アポトーシスの分子機構と生理作用、特にDNA分解の異常が自然免疫を活性化する分子機構。(2)マクロファージによるアポトーシス細胞貧食の分子機構を明らかにする。これらを目的とした。本年度は(1)胚発生途中で死滅するDNaseII^<-/->マウスとタイプI-IFN受容体(IFN-IR)^<-/->マウスを交配させたDNaseII^<-/->IFN-IR^<-/->マウスはメンデルの法則にしたがって誕生した。このことはDNaseII^<-/->マウスで産生されたIFNβが致死的に作用したことを示している。(2)DNase II^<-/->マウスとTLR9,TLR4,MyD88,TRIFなどTLRのシグナル伝達に関与している一連の遺伝子の欠損を掛け合わせた。しかし、どの遺伝子の欠損もDNaseII^<-/->マウスの致死性を回復することはなく、哺乳動物のDNAによるIFNβ遺伝子の活性化にはTLRシステムは関与していないと結論した。
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