研究課題
プロテアソームはユビキチンをパートナーとする真核生物のATP依存性プロテアーゼ複合体である。本酵素は触媒機能を司る20Sプロテアソームの両端に調節ユニットであるRegulatory Particle(RP)が会合した分子量2.5MDaの巨大な多成分複合体である。このようにプロテアソームは生命科学史上最も巨大で複雑な酵素複合体であり、蛋白質分解のための特殊な細胞内装置である。本研究では、プロテアソーム複合体の分子集合機構と分子多様性の解明を目指している。最初の分子集合機構の研究課題であるが、昨年発見した哺乳動物の会合支援シャペロンPAC1/PAC2ヘテロダイマーにに加えて本年はPAC3ホモダイマーを発見した。その結果、複数の分子シャペロンの協調的な作用により哺乳動物の20Sプロテアソームが正確に形成されることが判明した。さらに出芽酵母においてPAC1/PAC2/PAC3を代替するシャペロンとしてDpm1/Dpm2ヘテロダイマーを見出した。Dpm1/Dpm2とPAC3は一次構造上の相同性は乏しいがX線結晶構造解析で立体構造を解明すると、きわめて類似していることが判明した。次に分子多様性の課題であるが、我々は以前にImmunoproteasomeを発見したが、本年度さらに胸腺の上皮細胞に特異的に発現しているThymoproteasomeを発見し、作製したノックアウトマウスの解析から、胸腺におけるキラーT細胞の正の選択に関係していることを見出した。他方並行して進めているユビキチン研究においては、品質管理リガーゼの分子的機能や生理的役割を明らかにした。またオートファジー(自食作用)研究においてもニューロン特異的オートファジー欠損マウスが神経変性疾患を発症することを突き止めた。これらの成果は、生命の謎に鋭く迫ると共に、健康科学の発展に大きく寄与すると思われる。
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