研究概要 |
研究代表者らは,理科の授業における観察を支援するとともに,結果として得られたビデオクリップ自体を授業の教材とすることを目的とし,パソコンと安価なWebカメラを用いたビデオクリップ自動作成システムの開発,評価および本システムを用いた授業案の検討に関する研究を行ってきている.本年度は,本システムにおいて,複数のカメラの画像を1つのビデオクリップに並置して表示する機能を開発して実験授業を通して評価を行った.本機能は,複数の観測対象を比較しながら学習する場合に特に有効であることが期待される。ビデオクリップ並置機能とは,1つの画面にビデオクリップをいくつか並べて同時に見ることができる機能である.従来のシステムにおいては,1台のカメラで撮影可能な観察対象を継続して観察することを前提としてユーザインタフェースが設計されていたため,1つの画面にビデオクリップが1つであった.様々な観察対象を一画面に並置することは,観察者の視点の構成に対して良い効果を与えることが期待できる。複数の観察対象を観察して相違点や類似点を比較することにより学習を進めていく場合,従来のシステムでは,何本ものビデオを繰り返して再生する必要があった.しかし,本機能を用いると,複数の観察対象における相違点や類似点を同時に比較することができる.本機能に関する評価は,4種類の植物(マリーゴールド,百日草,ミニひまわり,ほうせんか)をカメラ8台を用いて長期間に亘り観察する授業(小学校3年生理科:植物園をつくろう,期間5月-10月)および物質の溶解・析出に関する授業(小学校5年生理科)において実施した.その結果,従来のシステムより幅広い視点で学習を進めていく児童が多くなるという結果を得た.
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