研究分担者 |
内村 太郎 東京大学, 大学院工学系研究科, 講師 (60292885)
小川 知之 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教授 (80211811)
川村 智 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 助手 (60324737)
島田 敏宏 東京大学, 大学院理学研究科, 助教授 (10262148)
松村 直人 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (30332711)
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研究概要 |
本研究では,最先端の科学研究に従事し今活発に研究活動をしている科学研究者(以下科学研究者)と本プロジェクトに参加する「知的好奇心」にあふれる高校生(以下参加高校生)とが「対話」し,その過程を「ポートフォリオ」として記録することによって,参加高校生と科学研究者が「共に学ぶ」システムを確立するとともに,参加高校生と科学研究者が相互に協力して「オーダーメードカリキュラム」を創生し,社会に提案することを目標としている。 特に,(1)学習者(参加高校生および科学研究者)自らが「自分は何を学ぶのか?」を選択できること,(2)「自分の学び」の正当性を自らが判断できる(する)こと,(3)ときには各種科学会など,学校社会とは異なった社会・文化とのかかわりの中で学ぶことを特徴とした実践活動を展開している。また,いくつかの合宿形式のセミナーを行い,それを核として参加高校生たちと科学研究者集団とが中・長期的にDiscussionし,「自分だけのカリキュラム」を参加高校生たちとともに作成するとともに,参加高校生たちの科学的思考の変容に関しても解析を行ってきた。合宿形式のセミナーとして美馬・内村を中心に「数理の翼」セミナーを開催したほか,広島に中国地方5県6校(平成17年度は9校)のスーパーサイエンスハイスクールの高校生を招いて第3回「数理科学セミナー」を行った(泉,松村,小川担当)。 これらの合宿型セミナーに参加した高校生たちを中心に科学的思考に関する分析を行ったところ,課題研究等をストーリー性をもって展開できる高校生たちはテーマに関する概念構造が『スケールフリーネットワーク』構造をしていることが明らかになった。また逆に,科学的知識や概念構造が『スケールフリーネットワーク』構造をしている高校生は,高校での科学教育において実験等を行っている頻度が高いことも明らかになった。一般に知識の構造が『スケールフリーネットワーク』構造となるためには,1)新しい知識・概念が導入され続けること(成長要件)と2)新しい知識・概念がより多くの関係付けを持つ知識・概念に関連付けされやすいこと(優先的選択性の要件)が充たされなければならない。ここで,課題研究等で実験を重ねることは,高校生たちが実験を通して新しい知識・概念を『反芻』することにより,知識・概念の『優先的選択』を行っていると考えられ,このことが課題研究等をストーリー性をもって展開できる力となっていることが推測される。 また,上記セミナー等での実践をもとに,「音声のフーリエ解析」を50分×2回の授業として教材化し,これを広島大学付属高校および修猷館高校で高校1年次の授業として展開した。今期間中,研究代表者および分担者が行った出張講義は22件である。
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