研究概要 |
課題開発:幾何の空間図形学習に関する課題として,見本とする立体を再現する課題を開発した。開発課題は2種類あり,見本が実物の場合(実物課題)と,見本がディスプレイ画面上に示された場合(5方向からの写真)(ディスプレイ課題)である。 実験実施:平成17年6月より大学生10名(18〜25歳)を被験者として光計測装置を用いて実験を行った。左右前額部を中心に格子状に13箇所を同時計測した。実験では,実物課題を4回,ディスプレイ課題を4回試行した。実験終了後,被験者に対して内省記述,さらに必要に応じて口述回答を得た。試行時は,試行過程分析のため,被験者右後方よりデジタルビデオカメラによる録画を行った。光計測装置による計測データは酸素化ヘモグロビン(oxyHb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)の2種類とし,約1秒間間隔でのデータ取得を試行開始から終了まで継続的に行った。 結果分析・研究成果:各被験者の行動観察,被験者の内省,及び光計測装置によるデータをもとに,分析を行った。行動観察より,実物課題に比してディスプレイ課題の所要時間が長く,内省からもディスプレイ課題の方の難度が総じて高いことが明らかになった。また,光計測装置によるデータより,ディスプレイ課題の方により難度を感じている被験者のdeoxyHbの増加が顕著であることなどから,課題の難度の高低がdeoxyHbの増減幅の大小に反映されているのではないかということが示唆された。さらに,見本と作製した立体が同一であるかどうかを目視で確認する時間帯においてdeoxyHbの増加が見られるなど,行動観察や内省では難度の高さが示されなかった時間帯のヘモグロビン濃度の増加が検出された。
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