研究概要 |
目的:小学生を対象として,図形課題遂行時における脳内ヘモグロビン濃度計測を通して,学習過程の生理学的解明を行う。また並行して計算課題遂行時のヘモグロビン濃度計測を通して,両者の比較を行う。 計画:前年度,大学生用に開発・実践した図形課題をもとに,小学生用に難度を調整したジグソーパズル課題を開発する。なお,前年度大学生で実施したディスプレイ課題実験は,小学生の予備調査で難度が高すぎたため,実物課題での実験とし,その特徴について詳細に検討することとする。また,前年度,大学生用に開発・実践した2種類の計算課題(筆算課題,虫食い算課題)の難度を,小学生用に調整する。上記の課題をもとに,図形課題及び計算課題遂行時における,小学生の脳内ヘモグロビン濃度計測を実施し,学習過程の生理学的解明を行う。 成果:被験者(小学生4名)に対して,上記の図形課題及び計算課題を用いて,脳内ヘモグロビン濃度計測を実施した。その結果,図形課題では,課題をスムーズに終了した被験者では,oxyHb, deoxyHbとも上昇せず,課題遂行に最も時間を要した被験者ではdeoxyHbの増加が顕著であった。これは,前年度に実施した大学生を被験者とした図形課題実験と同様の結果となった。一方,計算課題では,筆算課題と虫食い算課題遂行時の脳内のヘモグロビン濃度変化は,被験者の難度の感じ方の差異に影響することが示された。課題遂行に非常に時間を要した被験者の場合,deoxyHbの増加が見られ,虫食い算でその傾向は顕著であった。今回は,図形課題と計算課題の関連については,明確な結果を得ることができなかったが,被験者の捉える難度の差が,2種類のヘモグロビン濃度変化の上下変動に対応するという傾向は共通して見られた。また,deoxyHbは各部位の酸素消費によって生じることから,課題遂行時に神経活動が発生している部位の特定の可能性が示されたといえ,学習時の脳内メカニズムの解明につながるものであると考えられる。
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