研究概要 |
本研究では,視覚と力覚の連動により分子と分子間力を体感できる,新しい分子模型システム教材の開発を目的とする.具体的には,分子構造と物理的特性を可視化し,かつ非結合原子間に働く力を力覚デバイスにフィードバックさせることで,ファンデルワールス相互作用の引力と斥力の変化を視覚と力覚の連携により体感できるシステムを開発する.学習者はインタラクティブに分子を操作し,分子間力の変化を力覚で感じとることで,分子を疑似体験することができるシステムを開発する.本研究においては,対象を希ガス単原子分子間に絞り,人の感覚に効果的に働く基本システムを確実に構築することを目的とする.本システムは,可視化ソフトウェアと力覚デバイス,および視覚と力覚を連動させるソフトウェアからなる.まず,可視化ソフトウェアとしては,佐藤らが開発した化学系グラフィックスオープンソースライブラリ『ケモじゅん』を基本とするE-HaptiChemと,市販グラフィックスライブラリAVSを利用したもの(AVS-VI)の2種類のプログラムを開発した.ついで,これらの可視化ソフトウェアと力覚デバイスをそれぞれ連結し,視覚と力覚の連動により分子間力を体感できる基本操作系を構築した.力覚デバイスにはスパイダー(SPIDAR)を用いた.本基本システムを用いて,本操作系とデバイスの有効範囲と基本要件を調べるための実験を行い,分子間力体感における力覚デバイスの寄与の程度と,提示する力の大きさと分子間距離と提示力の比の有効範囲を定量化した.
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