研究課題
免疫系の活性化によるがん化の制御を目指し、とくにIRFファミリー転写因子に着目して、病原体認識受容体を介する免疫応答の誘導メカニズムの解析を行った。これまで、IRF5やIRF7、さらにIRF4の関与を示してきたが、別のIRFメンバーであるIRF1がToll様受容体(TLR)下流において、MyD88依存的に活性化されることによって、IFN-γによるIL-12p35やiNOS遺伝子の発現誘導を増強する役割を担っていることを見出した。また、TLR9/TLR7はMyD88依存性経路を活性化するが、このシグナルはTLR3下流で活性化されるTRIF経路との問に相乗効果を示し、IRF5依存性に強力な炎症性サイトカインの誘導が引き起こされるという、TLR synergyの機序の一端を解明した。一方、IRFやp53転写因子と中心とした発がんネットワークの解析については、X線や抗がん剤などのDNA損傷によるアポトーシス誘導に、p53経路とは異なった経路でIRF5が関与することを見出した。IRF5欠損細胞は活性化型Ha-Rasの発現によって足場非依存性増殖を獲得し、ヌードマウスでの造腫瘍性を示すようになる。さらに数種類のがん細胞株において、IRF5の発現が消失・減弱していることもわかり、IRF5ががん化抑制に関与していることが明らかとなった。また、p53誘導遺伝子であるNoxaとPumaに関して、Pumaは正常細胞やがん細胞両方にアポトーシスを誘導するのに対し、Noxaは癌遺伝子を発現させた細胞においてのみ誘導することを見出し、両者によるアポトーシスの誘導機序が異なっていることを示した。この結果から、がん細胞に選択的な細胞死をもたらすNoxaの遺伝子治療への発展性が期待され、現在検討中である。
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