研究概要 |
1)IRF5による発がん抑制と抗腫瘍免疫応答の制御メカニズムの解明;IRF5欠損マウス、細胞を用い、IRF5の細胞死受容体によるアポトーシス誘導及びがん細胞排除に及ぼす影響を解析した。その結果、IRF5遺伝子欠損細胞において、抗FAS抗体投与時のアポトーシスの誘導が抑制されており、さらに、マウスへの抗FAS抗体投与による劇症肝炎の発症についても検討を行ったところ、Irf5遺伝子欠損マウスにおいて軽減が認められ、IRF5の細胞死受容体シグナルへの関与が明らかとなった。また、がん転移マウスモデルにおいてIRF5欠損マウスが野生型に比べ高頻度のがん転移を生ずる現象についても解析を進めた。IRF5が免疫応答において、いかなる細胞群に作用してがん転移を抑制するかについて解析し、候補細胞の絞り込みを進めた。2)DNAによる炎症性免疫応答惹起と発がんの関係の解明;細胞はDNA刺激により自然免疫系を活性化し、I型インターフェロンに代表されるサイトカインを誘導することが知られる。我々はこのDNA認識受容体としてDAIを同定し、Dai遺伝子ノックアウトマウスを作製した。このマウスを用いて、生体におけるDAIのDNAによる炎症性免疫応答を検討したところ、DAIの役割は細胞種に特異的であることが判明した。さらに、細胞質内で免疫系を強く活性化するDNA認識に関わる分子をスクリーニングしたところ、主要タンパクとしてHMGB1,2,3が同定された。興味深いことにHMGBはDNAのみならずRNAにも結合することを見出し、HMGBのDNA、RNAへの結合が核酸認識TLRや細胞質内核酸センサーによる自然免疫系惹起の開始となること、すなわちHMGBが"common sentinel"として機能していることを見出した(Yanai H., et al)。HMGBが核酸による免疫応答の根幹を担っていることから、核酸を介した炎症反応を抑制することで、発がんを制御することができる可能性があると考えられる。 本年度にイメージアナライザーの購入を予定していだが、CO_2インキュベーターや保冷庫が故障するなど研究遂行の為の基本的な機器に不測の事態が生じたため、イメージアナライザーの購入を変更しそれらの購入に充てました。
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