研究概要 |
がん細胞の転移・浸潤には、低分子量Gタンパク質によって制御される、細胞骨格の再形成、開口放出による細胞膜の供給が必須である。我々は、Rhoにより活性化されてアクチンの重合を触媒するFormin(Daam)のFH_2ドメインの構造を2.8A分解能で決定し、新規のアクチン重合モデルを提唱した。また、開口放出時の膜融合制御に働き、がんとの関連が示唆されてきたRalAに関しては, GST-RalAをbaitとしたアフィニティー精製を行い, RalGAPを新規に発見することに成功した。また, 出芽酵母のRabであるSec4pのGEFであるSec2pのGEFドメインの結晶構造を3.0A分解能で決定し、本タンパク質がトロポミオシンに酷似した新規のGEFドメインを持っことを明らかにした。さらに、Sec2pとSec4pの複合体の結晶構造を2.7A分解能で決定し、GEFによるRabの新規の動的な活性化機構を明らかにした。さらに、TGF-bシグナルの下流で肝細胞の増殖・分化に働き、腫瘍抑制活性を持つヒトのHHM/GCIPタンパク質に関して結晶構造解析を試みた。HHM/GCIPはbHLH型転写因子をDNAおよびSmad2/3から解離させこれを抑制する。当初結晶の分解能は8A程度であったが、精製系を改良し、強力な還元剤を用い、さらに有利のシステインを重原子化合物でブロックすることで、分解能を3.1Aまで飛躍的に改善し、多波長異常分散法により結晶構造を決定した。HHM/GCIPは10本のへリッックスが5本ずつのへリックスバンドル構造を持ち、このN端ドメインとC端ドメインが鋭角にV字型構造を取った新規構造を持っていた。このN端ドメインとC端ドメインをつなぐ部位にHLHがあり、特異的なbHLH転写因子を結合すると考えられる。
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