研究課題
恒常的な増殖因子EGF受容体(EGFR)の活性化は、細胞の癌化に重要な役割を果たしている。細胞はエンドサイトーシスによりEGFRを細胞膜上から取り除き、リソソームによる分解を通じてEGFRシグナルを終了させる。昨年、新規MAPKKKタンパク質LRRK1が、EGFRがエンドサイトーシスされた後早期エンドソームから後期エンドソームへの移行に関与することを報告した。早期エンドソームは微小管上をダイニンモーター蛋白質依存的に核近傍へと輸送され、後期エンドソームへと成熟していくことが知られている。LRRK1をノックダウンした細胞では、EGFRの早期エンドソームから後期エンドソームへの移行が阻害されたが、time-lapseを用いたlive cell imagingから、EGFRを含む早期エンドソームの運動性が顕著に減少していることを見出した。そこで、LRRK1がEGFRのリソソーム分解経路選別に加え、ダイニン依存的な早期エンドソームの輸送に関与している可能性を検討した。LRRK1と相互作用する因子の中にダイニン結合因子NudCが含まれていたことから、LRRK1がNudCと共にEGFRポジティブ早期エンドソームとダイニンをつなぐアダプターとして機能していると予想し解析を進めた。その結果、(1)NudCはLRRK1と結合し、EGF刺激依存的に微小管上で共局在する、(2)NudCはダイニンをEGFR-LRRK1複合体ヘリクルートするのに必須の働きをしている、(3)NudCノックダウン細胞においてEGFRポジティブ早期エンドソームの微小管上の動きが顕著に減少すること、を明らかにした。これらの結果から、LRRK1はNudCと結合することで、ダイニンモーター蛋白質をEGFRポジティブ早期エンドソームヘリクルートし、核近傍への輸送に必須の役割を果たすことが明らかとなった。
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