研究課題
(1)TAK1シグナル伝達経路と発癌との関係:これまでの研究において、マウスにおける皮がんのモテルい、癌遺伝子H-Rasの変異により誘導される皮膚癌が、TAK1の欠損によって消失すること見出した。本年度は、TAK1欠損により癌細胞がどのように消失しているのか検討した。TAK1欠損の皮膚癌の細胞増殖は、野生型癌細胞と変わらなかった。一方、TAK1欠損皮膚癌組織において顕著な細胞死の上昇と活性酸素の蓄積が見られた。この結果は、皮膚癌において、TNFがTAK1欠損の環境で活性酸素を上昇させ細胞死を誘導していることを示している。これらの結果をさらに発展させることによって、癌特異的に細胞死を誘導する新たな癌治療方法の開発につながる可能性が考えられる。(2)LRRK1による細胞機能の制御機構:これまでの研究から、LRRK1がEGFRを含む早期エンドソームの微小管上の輸送に機能していることを見出した。LRRK1はダイニンモーター蛋白質NudCと結合し、EGFR-早期エンドソームのダイニン依存的な輸送に必須の役割を果たしている。一方、LRRK1をノックダウンした細胞では、細胞周期のM期に異常が生じることが明らかになった。セントロソームの成熟には、ダイニンモーター蛋白質が重要であることが知られており、LRRK1はEGFRの細胞内トラフィック及びM期染色体分配という2つの異なる細胞機能において、共通の分子機構を用いて重要な役割を果たしている可能性が示唆される。異常なEGFRシグナルの活性化や、不適切な染色体分配は、ともに細胞癌化の原因となる。LRRK1の作用機構の解明は、細胞の癌化メカニズムの一端を明らかにするのではないかと期待される。
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