研究目的 ES細胞と腫瘍細胞は、増殖や未分化維持の分子機構において共通点が存在することが予想される。ES細胞で特異的に発現する遺伝子群(ECAT:ES cell associated transcript)は正常成体組織では発現しないが、多くのヒト腫瘍細胞中での発現が示唆されている。このことはECAT遺伝子群の発現が腫瘍細胞の不死化や脱分化に関与している可能性を示唆する。本研究では、この可能性を検討するために次の研究を行った。 研究結果 1.ECAT遺伝子群の遺伝子ノックアウトによる機能解析 ECAT1、ECAT15-1、ECAT15-2、ECAT17、およびECAT20(Sall4)について、ノックアウトES細胞およびマウスの作製を行った。これまでにSall4KOマウスは、胎児期に致死となることが示唆されている。 2.ECAT遺伝子産物の生化学的解析 正常細胞とECAT遺伝子ノックアウト細胞との間でのDNAマイクロアレーによる遺伝子発現解析を進める。これまでにSall4の標的と考えられる遺伝子がいくつか同定されている。 3.細胞初期化におけるECAT遺伝子および癌関連遺伝子の役割の解析 昨年度の研究で、ECAT遺伝子(Oct3/4とSox2)および癌関連遺伝子(c-MycとKlf4)を組み合わせることにより線維芽細胞を初期化し多能性幹細胞を樹立できることを示した。今年度は、初期化過程におけるこれら4因子の役割を解析した。これまでにc-Mycはグローバルなヒストンアセチル化に関与することが示唆されている。
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