細胞周期の進行を制御するシグナルのカスケード反応としてAMPキナーゼカスケードに着目し、細胞増殖因子による増殖刺激においてERK1/2 MAPキナーゼ依存的に発現が低下する遺伝子群を同定した。また、そのうち顕著な低下と高いERK1/2 MAPキナーゼ依存性を示す29の遺伝子について解析を進め、7遺伝子がG0/G1期からS期への進行を抑制する遺伝子として機能することを見い出した。これらの遺伝子について、siRNAの手法でその発現を抑制すると、G0/G1期からS期への移行が促進されることも明らかとなった。これらの結果は、ERK1/2 MAPキナーゼが、細胞周期の進行を抑制する遺伝子の発現を低下させることによって、S期への移行を促進するという新しい機構を明らかにするとともに、癌抑制遺伝子の候補遺伝子を新たに同定するものである。次に、ERK1/2 MAPキナーゼがこれらの遺伝子の発現を低下させる機構について解析を行ない、AP1の機能に依存して発現が低下する遺伝子とAP1に依存しないものとに大別されることが示された。現在、さらに解析を進めている。 細胞周期のM期の進行を制御するカスケード反応としてM期タンパク質キナーゼネットワークの解析を行った。進化的に高度に保存されたM期タンパク質キナーゼであるPolo-like kinase1(Plk1)に、まず着目し、その基質となりうるM期のタンパク質キナーゼとして、M期チェックポイントで機能するBubR1とcdc2(cdk1)の抑制機能をもつMyt1の2つのタンパク質キナーゼを同定した。BubR1とMyt1両分子のPlk1によるリン酸化部位の同定とリン酸化による機能の変化の有無について解析を進めている。
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