研究課題
がん化の過程をコンピューター上で再現するシステムを構築できれば、ピンポイントの創薬や、理論に基づいたオーダーメイド治療法の選択などが極めて迅速にできるようになることが期待されている。われわれは細胞がん化にきわめて重要な役割を果たす細胞増殖情報伝達系(チロシンキナーゼ-Ras-Raf-MARK)の情報伝播過程の画像化を行い、その実測データに基づくシミュレーションの構築を行った。昨年度までにFRETプローブを使って活性変化の動態を解析したので、本年度は、まず、DronpaというOn/Offができる蛍光蛋白を使って分子間の解離定数を測定した。さらに、個々の分子の濃度、脱リン酸化酵素により不活化の速度などを定量的イムノブロッティング法を用いて測定した。これらのデータをもとに最小必須コンポーネントからなるシミュレーションモデルを構築した。このモデルにおいて、Rafの量がこの情報伝達系のシグナルの強度をもっとも規定していることが予想された。そこで、RNAiを用いてRafをノックダウンしその影響を解析したところ、確かに、細胞内のRafの量がこの細胞増殖情報伝達系の強度の設定に大きな影響を与えていることが明らかとなった。一方、このモデルではシグナルの強度は情報伝達の下流に行くほど低下していくが、実際にシグナル強度は逆に強くなっていくことが分かった。今後、この原因を突き詰めていくことで、Ras/Raf/MEK/ERK情報伝達系の活性制御機構についてより深い理解が得られるものと期待される。
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