研究概要 |
可変型遺伝子トラップベクターpU-21を用いて遺伝子トラップESクローンを単離し、トラップした遺伝子を同定できた800クローンについて、EGTCデータベースに登録した。 日本産野生マウス由来のMSM/Msマウスから樹立したMol/MSM ES細胞を用いて遺伝子トラップを行い、142クローンを単離した。そのうち99クローンで1コピーのトラップベクターが挿入されていた。トラップ遺伝子の同定を行ったが、理由は不明であるが、rRNAへの挿入が多いことが分かった。セルレイン投与による実験的膵炎の各種マウス系統間の感受性の違いについて解析した。その結果、JF1とC57BL/6は抵抗性、C3Hは感受性、MSM,BALB/c,CBAは中間型であることが分かった。膵炎の発症に直接関与するPrss1の発現パターンを解析したところ、感受性群では刺激前ではmRNAの発現レベルは変わりないが、刺激後に発現が低下するが、逆にタンパクは刺激後に上昇することがわかった。Spink3については、刺激前の発現はmRNA及びタンパクとも系統間で発現の差はないが、刺激後に抵抗性群でmRNAおよびタンパクとも発現が上昇することがわかった。すなわち、Prss1の発現は感受性と正に相関し、Spink3は負に相関することが分かった。長期にわたる慢性膵炎モデルの確立のため、CDE食による慢性膵炎モデルの樹立を試みた。まず、1日の絶食、3日間のCDE食、3日間の普通食の合計1週間のサイクルで、長期観察と、炎症と再生を引き起こすことが可能となった。そこで、1年間にわたりCDE食を与えたところ、慢性炎症から線維化が起こり、12週頃からEGFR, TGFalpha, GTP-Ras, Cox2等の遺伝子発現が上昇することが分かった。しかし、膵がんは発生せず、別の要因が必要であることが示唆された。
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