研究概要 |
EBER発現トランスジェニックマウスを作製するために、まず、マウス培養細胞におけるEBER高発現系の構築を試みた。EBERはRNA polymerase IIIにより転写されると考えられているため、プロモーターとしてhuman U6, mouse U6, H1, 7SK promoterを検討した。promoter-EBER1-promoter-EBER2という順番のEBER発現plasmid vectorを構築し、NIH3T3細胞に導入して薬剤セレクションによって安定発現株を得た。その結果、human U6 promoter(以下U6 promoter)を用いた場合(U6-EBER)に最も高発現の細胞株が得られ、発現量は、EBウイルスのEBER領域を10個tandemにつなげたplamid vector (EKS10)を用いた場合に比べて、EBER1ではほぼ同等、EBER2では4倍から10倍であった。次にU6-EBERを10個tandemにつなげたplasmid vector (10×U6-EBER)を作製し、NIH3T3細胞で安定発現株を樹立した。その結果、EBERの発現量はU6-EBERに比べて5倍から10倍であった。これらの結果から、EBERトランスジェニックマウスの作製には10×U6 EBERを用いることとした。 トランスジェニックマウスの作製は日本SLCに依頼した。Slc:BDF1マウスの受精卵698個に10×U6-EBERをマイクロインジェクションし、自然分娩によって107のファウンダーマウスを得た。これらのマウスのうち離乳した95クローンについてgenomic DNAを調整し、EBERI全長をPCRとSouthern blotの2つの方法によって検出して、genotypingを行った。その結果、12クローンがEBER positiveであったため、C57BL/6マウスとの交配によりヘミ接合体、ホモ接合体を作製した。作製過程において5系統が死亡したため、7系統の脾臓、胸腺、肝臓よりRNAを調整し、RT-PCRによりEBERの発現量を検討した。その結果、EBERの発現量はバーキットリンパ腫細胞株に比べて1/100以下であった。また、脾臓、胸腺、肝臓の切片を作製し、in situ hybridizationによってEBER1の発現量を検討したところ、脾臓、胸腺では染色が観察されたが、肝臓では観察されなかった。 EBERの発現量が高い4系統について、経時的にphenotypeを観察するために約1年間マウスを飼育したが、胸腺、脾臓、リンパ節の増大、腫瘍の形成といった目立ったphenotypeは観察されなかった。
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