1)B細胞特異的にc-Mafを高発現するトランスジェニックマウスの解析(ヒト多発性骨髄腫モデルの確立) ヒト多発性骨髄腫の約半数で認められるc-Mafの過剰発現を再現する為に、B細胞特異的にc-Mafを過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。B細胞にc-Mafを過剰発現することにより、頻度は低いものの形質細胞腫が発症した。それらのマウスでは、高イムノグロブリン血症が発症し、腎臓にイムノグロブリンが沈着する骨髄腫腎の発症が認められた。骨髄中にも腫瘍細胞の浸潤が認められたが、明らかな骨破壊像は見られなかった。c-Mafの過剰発現により上昇している標的遺伝子を解析したところ、Integrin-β7、CyclinD2、Blimp1、Xbp-1、Osteopontinの発現の上昇が認められた。Osteopontinは骨破壊を抑制する作用があるため、骨破壊が少ないと考えられた。これらの結果を現在論文として投稿している。 2)腫瘍随伴マクロファージにおけるMafがん遺伝子の機能解析 腫瘍の進展、転移には腫瘍随伴マクロファージが重要な機能を有していることが報告されつつある。MafBおよびc-Mafは血液細胞では主にマクロファージ系の細胞に発現しており、マクロファージサブタイプであるM2マクロファージにより高く発現している。腫瘍随伴マクロファージはM2サブタイプのマクロファージと考えられており、Mafがん遺伝子がその機能発現に重要な機能を果たしていると予想される。そこでMafBおよびc-Maf欠損マウスを用いて、腫瘍随伴マクロファージにおけるMafがん遺伝子機能を解析した。その結果、腫瘍に浸潤しているマクロファージには、MafBが発現しており、M2型の遺伝子発現をしていることが明らかとなった。またMafBを欠損するマクロファージを有するマウスでは、腫瘍がより大きくなることが明らかとなった。
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