研究課題
本研究の目的は、我々が同定したクロマチンリモデリング因子の一つであるTAF-I/SETをコードする遺伝子と核膜孔構成成分である.CAN/Nup214をコードする遺伝子の融合遺伝子であり、未分化の骨髄性白血病の染色体転座領域に見いだされる融合遺伝子であるTAF-I/SET-CAN/Nup214による細胞がん化機構を明らかにすることである。これまでに、TAF-I-CANが細胞の足場非依存性増殖を促し、低血清存在下での増殖を可能とし、またヌードマウスで造腫瘍活性を持つことを示してきた。本研究では、loxP配列でcDNAの両側を挟んだTAF-I-CAN発現ベクターを挿入したTAF-I-CAN発現細胞株を作成した。Creリコンビナーゼを発現させ、TAF-I-CANのcDNA配列を除いた細胞は、足場非依存的な増殖能を失い、低血清培地存在下における細胞死も誘導されるようになったが、低血清培地存在下での細胞増殖能は維持されていた。すなわち、この細胞株ではTAF-I-CANが一度発現したことで得られた表現型の一部は、エピジェネティックな機構で維持されている可能性が示唆された。個体レベルでTAF-I-CANの機能を検討するため、赤芽球系及び巨核球系細胞で活性のみられるGATA-1プロモーターにTAF-I-CANを挿入したトランスジェニックマウスを構築したところ、顕著な血小板減少が認められた。加えて、大球性貧血が認められたラインも出現した。血小板減少と貧血が観察されたラインでは、白血病の発症は観察されなかったが、野生型マウスに比べ生存期間の減少が観察された。骨髄細胞のFACS解析を行った結果、Tgマウスでは骨髄細胞数の増加と骨髄前駆細胞の割合の増加が認められた。一方、赤芽球系の細胞分化において、Tgマウスでは前駆細胞より分化が進行したステージの細胞群の割合が減少していた。従って、TAF-I-CANの発現によりマウス造血細胞において造血細胞の分化が阻害され、幼若な細胞画分の増加が生じた可能性が考えられる。
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