研究課題/領域番号 |
17013018
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永田 恭介 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (40180492)
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研究分担者 |
竹内 薫 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (00192162)
奥脇 暢 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (50322699)
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キーワード | 遺伝子 / 癌 / 分子生物学 / 染色体転座 / 転写 / クロマチン / 細胞死 / 細胞周期 |
研究概要 |
SET/TAF-Iβ-CAN/Nup214(以後TAF-Iβ-CANと表記)は、白血病で見られる染色体異常del(9)により生じる融合型遺伝子産物である。培養細胞を用い解析から、TAF-Iβ-CAN発現NIH3T3細胞においては、細胞死誘導刺激による細胞死の抑制がみられた。TNF-α刺激に対してはNF-κB阻害剤添加により細胞死抑制が減少したことから、TAF-Iβ-CANがNF-κBの抗アポトーシス活性を亢進させている可能性が示された。また、白血病患者ではTAF-IβとCANの発現量が減少していることから、個体での解析としてTAF-I遺伝子ヘテロマウスとTAF-Iβ-CANトランスジェニック(Tg)マウスをかけ合わせ、TAF-1遺伝子ヘテロTgマウスを作成した。白血病の発症は観察されなかったが、Tgマウスで観察された血小板減少と貧血が亢進し、生存期間がさらに短縮したことから、TAF-1の発現量の低下もTAF-Iβ-CANの機能に関与することが推測された。 染色体転座の機構についても解析を行った。ある種の染色体転座では、V(D)J組換え反応の実行因子RAGの誤ったDNA認識による異常な組換え反応が原因である可能性が指摘されてきている。培養細胞を用いた実験系により、プラスミド上のTEL-AML1の転座領域DNA間でRAG依存的な組換えが検出され、さらに細胞核内染色体上のTEL転座領域でのRAG複合体のクロマチンへの結合とRAG依存的な2本鎖DNA切断が観察された。試験管内再構成系による実験では、RAGがTELおよびAML1の転座領域DNA断片にニックを導入すること、また一部の切断箇所にはV(D)J組換えのシグナル配列に類似した配列が多数存在し、RAGはそれらの偽シグナル配列に結合し切断することが明らかとなり、急性リンパ性白血病に属するTEL-AML1の染色体転座形成にRAGが関与していることが示された。
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