消化管上皮と尿路上皮で特異的に導入遺伝子が発現されるephrin-A1のトランスジェニックマウスとApc^<min>マウスとの交配実験を行った。ephrin-A1(EFNA1)の発現亢進は、Apc^<min>マウスに発生する腺腫において、腺腫細胞の絨毛部から腺窩部への下方進展の促進と腫瘍間質の活性化作用があることが示された。また、ephrin-A1、優勢抑制型TGF-βII型受容体につづき、恒常活性型TGF-β1を消化管上皮に発現するトランスジェニックマウスも作製した。 腫瘍の発生と進展に関与しうるTGF-βシグナルの関連分子として、新たにELAC2を同定した。ELAC2はN末端領域でSmadと結合し、SmadとSp1やFOXH1との結合性を増強することで、TGF-βシグナルによる標的遺伝子の転写を活性化する作用をもつことが判明した。遺伝子ノックダウン法を用いて、ELAC2の発現を抑制すると、TGF-βによるp21の発現亢進作用が低下し、増殖抑制作用も低下した。また、TMEPAI(PMEPA1)がTGF-βシグナルによって誘導され、R-Smadをトラップすることで、I-Smadと同様にTGF-βシグナルにネガティブフィードバック作用を示すことを明らかにした。現在、この分子のノックアウトマウスの作製を開始している。 さらに、薬物代謝の第2相酵素群や第3相のチャンネル分子ならびに抗酸化分子等の発現誘導に中心的な役割を果たすNrf2もTGF-βシグナルの標的となっていることを発見した。現在、この作用機序の解析も進めている。
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