研究概要 |
以下の解析結果から、細胞増殖や細胞死の制御に関して新しい知見を得た。中でもmRNA代謝制御と細胞増殖・細胞死の関連を指摘できたことは重要である。 Tobの新たな機能解析: UV刺激依存的DNA損傷におけるTobの役割について以下を明らかにした。(1)TobはUV線量依存的に発現状態が変動する。すなわちTobは、弱い線量(30-50J/m^2)では転写レベルで発現が亢進し、強い線量(100J/m^2)では、ユビキチンープロテオソーム系により分解される。(2)Tobの安定的発現がUV刺激依存的な細胞死誘導を抑制する。これらの現象はp53欠損細胞でも観察され、p53非依存的である。またTobは、抗癌剤による細胞死も抑制し、Tobの発現・機能制御による抗癌剤の効果増進が示唆された。 mRNA代謝制御複合体CCR4-NOT構成成分の解析: (1)Cnot1蛋白質 RNAi法によるCnot1,Cnot2の発現抑制では細胞集団の約30%で細胞死が誘導された。またCnot1がCCR4-NOT複合体の足場蛋白質として機能し、Cnot1欠損で複合体サブユニットのうちのdeadenylase活性をもつCnot6,6L,7,8が不安定化することを見出した。 (2)Cnot6L蛋白質 Cnot6L発現抑制でp27^<Kipl>mRNAが安定化し翻訳量が上昇していること、更にCnot6Lがp27^<Kipl>mRNAの3'UTR配列を認識してdeadenylase作用を発揮することを示した。また、Cnot6LやCnot7のX線結晶構造解析を行い活性ドメインの構造を決めるとともに、少なくともin vitroではそれらのdeadenylase活性をTobやBTG2が抑制することを示した。 (3)Cnot3蛋自質 cont3欠損マウスが胚性致死であることを示した。更にcnot3ヘテロ欠損マウスは基礎エネルギー代謝が昂進し瘠せ形質を示すことを見出した。
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