研究概要 |
mRNA代謝制御と細胞増殖・細胞死等との関連で新しい知見を得た。 Tobの機能解析 : (1) UV刺激依存的に引き起こされるDNA損傷に応じて細胞死が誘導されるが、Tobはこの細胞死に抑制的である。一方で強いUV線量下では、Tobはユビキチンープロテオソーム系により分解される。今年度UV刺激依存的活性化されるATR-Chk1キナーゼカスケードがTobを分解するプロテアソームを作動させていることを見出した。 (2) 構造生物学的解析から、TobとRtg2に保存されているBoxA, BoxB配列がCnot7とTob、Btg2の会合に係ることを示した。また、TobやBtg2によるCnot7のデアデニレース活性の阻害が、その会合に依存することを示した。 mRNA代謝制御複合体CCR4-NOT構成成分の解析 : (1) Cnot1やCnot2の発現を抑制すると細胞死が引き起こされる。このときにmRNA分解の場とされているP-bodyが減少することを示した。さらに、Cnot6, Cnot6L, Cnot7, Cnot8個々の発現抑制ではアポトーシスは誘導されなかったが、これらデアデニレースすべての発現を抑制するとCnotlやCnot2の発現抑制の場合と同程度のアポトーシスが誘導された。このときP-bodyの生成は見られなかった。 (2) Cnot3蛋白質 昨年度Cnot3ホモ欠損マウスは胚性致死でヘテロ欠損マウスは痩せであることを示した。今年度はCnot3ヘテロ欠損マウスでは同時に成長が抑制されていることに着目して解析を進めた。野生型マウスとCnot3ヘテロ欠損マウスの肝臓mRNAを用いたマイクロアレー解析から、Cnot3ヘテロ欠損マウスではIGFBP1に対するmRNAが安定化していることを見出した。その結果IGFBP1の発現が亢進し、個体の成長を抑制していると推定した。
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