研究課題/領域番号 |
17013022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 誠司 東京大学, 医学部附属病院, 寄附講座教員 (60292900)
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研究分担者 |
熊野 恵城 東京大学, 医学部附属病院, 研究拠点形成特任研究員 (90396721)
鈴木 隆浩 東京大学, 医学部附属病院, 寄附講座教員 (40345210)
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キーワード | 造血器腫瘍 / ゲノムコピー数異常 / 高密度オリゴヌクレオチドアレイ / LOH / アレル不均衡 / CNAG / Blimp1 / 造血システム |
研究概要 |
白血病や悪性リンパ腫を含む造血器腫瘍では、その発症母地となる造血システムが異常をきたし、細胞増殖や分化、細胞死に関わるシステムの制御からの逸脱が観察される。一方、こうした異常は究極的にはゲノムの変異に基づいて生ずるのであって、造血器腫瘍におけるゲノム異常の解明は、造血腫瘍の発症と造血システムの制御機構を明らかにする上で、極めて重要である。そこで、本研究では、マイクロアレイ技術を用いた腫瘍ゲノム異常の網羅的な探索による白血病・リンパ腫の原因遺伝子の探索と、その機能解析を行った。すなわち、従来大規模SNPタイピング用に開発された高密度的オリゴヌクレオチドアレイを応用して腫瘍ゲノムに生ずる微細な増幅・欠失を24kb〜5.8の解像度で探索することを可能とするCNAGシステムを独自に開発し、同システムを用いて多数の造血器腫瘍について、ゲノムコピー数の異常を網羅的に探索した。また、本システムでは、SNP特異的に設計されたプローブの特性を利用して、ゲノムワイドなLOHの探索およびコピー数変化のアレル別の解析も可能であった。計983例の造血器腫瘍の解析の結果、多数の新たな異常を含む膨大な数のゲノムコピー数の異常およびLOH/アレル不均衡を示す領域が同定された。複数の症例で繰り返し異常を示す領域も多数同定され、多くの領域で候補となる標的遺伝子を確定することが可能であった。さらに、悪性リンパ腫のホモ接合性欠失から同定されたBlimp1遺伝子については、変異解析により腫瘍特異的な変異が確認されるとともに、その機能解析により、細胞周期の停止を強力に誘導すること、その細胞周期停止機能は、Rbとp53に依存性で、p57およびp21の誘導とp53蛋白の安定化を介して機能することが明らかとなった。現在他の標的遺伝子についても順次解析を進めており、これらの解析を通じて、造血システムの制御機構と造血器腫瘍の発症機構を明らかにすることができると期待される。
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