研究課題
本年度は下記の3点に焦点をあて、研究を進めた。1.核内受容体共役因子の同定:各種核内受容体と相互作用する核内因子複合体群の精製・同定した。特に、性ステロイドレセプター種[ERα、ERβ、アンドロゲン受容体(AR)]やビタミンD受容体(VDR)、PPARγ、HNF4等の核内受容体群に固有かつN末端に結合する転写共役因子複合体の検索・同定を、ホルモン依存癌由来の各種細胞株の核抽出液より試みた。第一に転写を促進する因子群の同定をin vitro転写系により判別する系を構築し、第二にクロマチン構造を制御する因子や、細胞周期を制御する因子の同定も成功した。2.ホルモン依存性癌におけるステロイド受容体転写共因子の機能:転写共役因子の機能異常もしくは量的な制御により、ホルモン依存性癌における性ステロイドホルモン応答性が変わる可能性が示唆されている。この点を明確にする目的で、転写共役因子のノックアウトマウスを作出した。近年、同研究室で見出した新たなERα転写共役因子であるp68、p72のノックアウトマウス表現型は細胞増殖能の著しい低下により胎生期のごく初期に致死となり、発生に非常に重要であることが判明した。今後、ホルモン依存性癌が現れる組織特異的なノックアウトマウスを作出することで、ホルモン依存性と転写共役因子の相互関係が明確にできるものと期待される。3.異変男性ホルモン受容体の発癌における機能:ARのホルモン結合領域(LBD)には、ホルモン非依存性の前立腺癌に高頻度に見出される点変異(877番目のスレオニンがアラニンに変異)が知られている。この変異によって内因性の他のステロイドホルモンや、抗アンドロゲン剤にも応答性を獲得するために、変異ARは異常に機能亢進を行うため、発癌あるいはホルモン非依存性癌への進行が仮定されている。そこで、このような点変異をマウスARに導入することで前立腺癌の増悪に繋がることを導いた。このマウスはホルモン依存性前立腺癌マウスのモデルマウスとなると期待される。
すべて 2006 2005
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