研究課題
性ホルモン依存性癌における核内性ホルモン受容体の機能を調べる目的で、性ホルモン受容体の主たる機能である転写制御の分子機構について、生化学的な解析を行なった。本年度では、女性ホルモン受容体(ER)を対象にし、この受容体に結合するいわゆる転写共役因子群を網羅的に解析した。女性ホルモンは、標的細胞の増殖を制御するため、本年度では細胞周期との関連を詳細に調べた。その結果、細胞周期分裂期(M期)において、女性ホルモンは細胞増殖を促す効果があることを確認した。そこで、このM期での乳がん細胞株(MCF7細胞)から、大量の核抽出液を調整し、相互作用因子を質量分析計にて網羅的に同定した。同時に、これら相互作用因子の機能について、生化学的な解析を行なった。その結果、ERはM期において、タンパクをユビキチン化する活性を有することを見出した。次に、このユビキチン化の基質を検索したところ、サイクリンBを標的とし、女性ホルモン依存的にユビキチン化、タンパク分解を促すことを見出した。実際、MCF7細胞を女性ホルモンで処理をすると、サイクリンBタンパクが減少することを確認し、ユビキチン化阻害剤で処理すると、このタンパク分解が抑制されることを見出した。そこで、このM期特異的な女性ホルモン受容体のユビキチン化活性を制御する実体を解明すべく、更にM期特異的に結合する因子を検索した。その結果、数個の候補因子の同定に成功し、現在インビトロ再構築系において、エストロゲン依存的なユビキチン化を調べているところである。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)
Genes Dev. 24
ページ: 159-170
J.Biol.Chem. 284
ページ: 32472-32482
Nature 459
ページ: 455-459